旅する若者たち

 とある漫画家先生の展覧会目当てに、自称オタクな姪っ子姉妹が週末にやってきた。日中予定のあった土曜、「泊められるけれど、夕方までは勝手に行動して」と放置。若いエネルギーの成せる業か、ハードスケジュールであちこち楽しんだようだ。在京の身でも数年に一度しか訪れない小さな美術館にも出向いた様子。しぶい日本画に「かわいい」と感想をのべる。その探知力とセンスに関心しつつ、あふれる好奇心にハードに動きまわった若き日の自身を懐かしむ。

 明けた日曜は半日だけいっしょに行動、トキワ荘ミュージアムへ。完全に親(我が兄)の影響であるが、彼女たちは年齢に見合わずトキワ荘の住人であった漫画家の作品にふれていて、なかなかの高揚ぶりであった。

 トキワ荘は、のちに巨匠とよばれる漫画家たちが若き日に集っていた住居。言わば漫画家シェアハウスだ。「この部屋で長時間描き続けるとか信じられない。いろいろ、すごい」ボソボソと話す姪の声をききながら、そこに座っていただろう漫画家に心情を重ねる。仲間たちと騒ぎあう姿の写真に、ああここに青春の熱があったんだなと笑みがこぼれる。


 若者の葛藤と希望は、いつも近くにある。いつも心をふるわせる。姪っ子たちは、これからどんな道を歩んでいくのだろう。どんな道もありだよ、ということぐらいしか言えないけれど、親とは違う「斜めの関係」ゆえに受け止められることはありそうだ。自分の道もさぐりながらね。


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