2022年に出会った岡本太郎

 つぎつぎ、ぞくぞく、岡本太郎の作品。そりゃそうだ、「展覧会 岡本太郎」なのだから。過去最大規模の回顧展の前情報どおり、彼の作品にこれでもかと囲まれ、気持ちよく圧倒される展覧会であった。

 18歳の時に渡ったパリ時代の作品は新鮮だった。なじみの作風と違うけれども、そこに確実に宿る生を感じるものだった。ひとりの芸術家の道のりを探っていくトリップ。喜びや哀しみが降りかかってくる。彼が対峙した戦争もそこにあった。2022年に胸をキリキリと締め続けたニュースがさらにキリキリと重なった。残酷さを跳ね返す芸術、生の叫び。きっと人間が好きで、生の強さと尊さを体現しつづけた人なのだろうなぁ。むきだしの歓喜が作品に実っているようで、トリップの出口、私は笑顔と元気に満たされていた。

 作品を堪能しながら期せずして苦笑してしまったことがある。観て回っているオバ様たちが、口々に「爆発よねぇ」「エネルギーの塊の人だから」と話していたのだ。一人や二人ではない、「爆発」「エネルギー」連発、驚くほど多くのオバ様会話であった。芸術は爆発だの人、という刷り込みは相当だ。広告づくりに長く携わってきた者としては「すごいなCMコピー」と感心しつつも、情報にまどわされない眼力と感覚を大切にしなくちゃとも思った、2022年冬である。

saikosan

さいこさんの創作セカンドライフ

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