大人ノ恋愛事情レシピ

愛しい人を料理でうならせる。これほどクセになる快感はない。

おいしいものを口にした時、人は無防備になるから。

特別、手のこんだものでなくたっていい。

状況事情をかみふくんだ大人の気遣いと知恵があれば、

二人で何かを分かち合う料理になる。

かけひき、おもいやり、ほとばしり、どんなかくし味をしのばせようか。

大人の恋は美味い。 恋愛事情を包みはぐくむレシピ集。

大人の時間は早い。ふたりで最初の春を迎えてから、しゅるしゅると沢山の季節が廻った。始まった頃の心躍る気持ちは落ち着いたけれど、春の兆しに気持ちふわふわと見慣れた笑顔が新鮮にみえたり、訳もなく腕をつまんだりしたくなる。芽吹きの季節のいたずらか。今日はまだ寒いから少し季節を先取り、出回りはじめた新玉ねぎをじんわり焼く。とろけるような甘さにうっとりしよう。

作り方

① 新玉ねぎを1.5cm幅位の輪切りに。

② フライパンを中火にかけオリーブオイルを適量ひき、①の玉ねぎを並べる。上面に塩胡椒して、じっくり焼き目がつくまで焼き上下ひっくり返す。

③ 蓋をして中弱火で蒸し焼きに。玉ねぎが透きっ通ってきてもう片面にも焼き目がついたら醤油を少量(玉ねぎ1玉に対して小さじ1/2程度)振り入れ、フライパンの蓋をとったまま風味がたつまで加熱する。

④ 皿に盛りつけ、かつおぶしを適量のせる。

・厚切りベーコン、きのこ、菜花、蕪など、いっしょに焼いてもよい。

嘘はついていないが、黙っていることはある。この人に話したところで過去は変わらない。でも、未来は変わるのだろうか…そんな思いをめぐらしながら、ブリをひっくり返す。「揚げ物に集中してる?」不意に声をかけられる。鍋を凝視して怖い顔に見えたのか。「ぜんぜん集中してないよ、邪念だらけ」笑いながらふりむくと、グラスが綺麗か確かめている、すこし神経質な顔がそこにあった。ホッとする。お互い変えられない性格と過去。未来はなるようにしかならない。今を愛そう、愛し合おう。「熱いうちに食べるよ~」

作り方

① ブリの切身(120g)に塩と酒を少々ふり、5分ほど置いたらキッチンペーパーで身をやさしく押さえるように水気をふきとり、ひと口大に切り分ける。

② 醤油と酒(各々小さじ1)に本みりん(小さじ1/2)と生姜汁(小さじ1)を合わせ、①のブリを15分以上漬け込む。

③ 片栗粉(適量)を②の切身にまぶす。

④ 170度に熱した油(適量)で揚げる。油の温度をできるだけ一定に、4,5分目安。

※小さなフライパンに1~2cm程度の油をいれ、揚げ焼きでよい。中~弱火で片面数分ずつ目安。

・好みで酢橘やレモン汁を絞っても。

唐突に会いたいって…何があったのだろう。いつも冷静な人なのに珍しい。急なことで、ゆっくり料理を考える時間がない。冷蔵庫をみまわし、飲物と春巻きの皮だけ急いで仕入れてキッチンで到着を待つ。ひとつは刻んだ大根とハム、もうひとつは昨日の残りのポテトサラダ。手の込んだ中味は作らない、今日あるものを包む、今日の春巻き。会いたい理由はまだわからないけれど、今日の気持ちを全部受け止めて包み込むだけだ。そう思っているだけで、なぜかじんわりと温かい気持ちに自分が包まれている。キッチンが暑いだけ?

作り方

① 大根を3.4㎜目安の千切りに。軽く塩をふり少し置きしんなりしたら、水気を絞る。

② ハムも同様のサイズ感で切っておく。

③ 春巻きの皮で A:大根とハム B:ポテトサラダを

それぞれ適量のせて巻き包み、巻き終わりに水溶き薄力粉を塗ってとめる。

④ 鍋底から1.2cm程度のサラダ油をいれ、170~180度に熱し、中火で③の春巻きを両面カリッとキツネ色になるまで揚げ焼く。そのままでも食べられる具材なので、皮をカラッとさせることだけに注力すればよい。

※Aは大根とハムの塩気でOK、Bもできあがったポテトサラダなので、味付けも、つけだれも不要です。好みで辛子をつけてどうぞ。

#大根 #ハム 

手料理をふるまうのは二度目だ。一度目は、相手の好きな物とか、腕前を見てほしいとか、いろんな想いが混ざった品揃えとなった。きょうは究極的に簡素な一品を。サイドメニューなふりをして気持ちは勝負皿。季節の野菜、蕪を焼いた。手間も味つけもシンプルな料理に、どんな反応をするだろう。この質素な滋味を、美味しいと感じるだろうか。もしかして気づかぬうちに試すようなことしている? 自分は好きだけど、そっちはどうよって。結果は同意。解っていた気もする。もう少し静かに迷っていたかったけれど、この恋このままどんどん進めるよ。

作り方

① 蕪は、葉の部分を少しだけ残し、蕪の大きさに合わせ4~6つ割りに。※葉の付け根に土が残っていることがあるのでよく洗う。

② 蕪に美味しい塩(だし塩や岩塩など)少々をふりかける。オリーブオイルも適量(蕪2個に対し小さじ1程度)まわしかけ、まんべんなくなじませる。

③ 耐熱皿に蕪を並べ、200度のオーブンで20~30分焼く。※主にオーブンの下段で焼き、焦げ目が足らなければ最後の数分上段にうつす。

※オーブンでなく魚焼きグリルで焼くこともできます。弱火で10分程度。焦げすぎないよう途中で向きをかえてください。

もうすぐ腹ペコがやって来る。豚肉があるから生姜焼きでも作ろうか、いや、もっとワンパクにしてやれ!ケチャップ味だ!付け合わせはコンビニで急ぎ仕入れた千切りキャベツ(ちゃっかり時短で)。昨日の残りのポテサラも添えて、はい召し上がれ。色気より食気な日もある。モグモグしながら無言でこちらを見つめる、その満足顔がご褒美。キャラに見合わぬ食べっぷりに何度キュンとしただろう。これね、けっこう野菜多めだよ。色気にも食気にも身体は大事。

作り方

① 豚肉(ロース・ヒレ等 かつ用 150~200g 厚さ1cm目安)を、大きめのひと口大に切りわける。両面に軽く塩胡椒をふり、小麦粉をまぶす。

② 玉ねぎ(1/2個 100g)は薄切りに、エノキダケ(50g)はほぐしておく。

③ ケチャップ(大さじ2)ウスターソース(大さじ1)醤油(小さじ1)を混ぜ合わせておく。

④ フライパンを熱しサラダ油(小さじ1~2)をひき、①の豚肉を中弱火で片面2分ずつ焼く。

⑤ 肉をフライパンの片側によせ(余分な油があればふき取り)、②の玉ねぎとエノキダケ・すりおろしニンニク(小さじ1/2)をくわえ、全体をざっくり炒め合わせたら、酒(小さじ2)をくわえ蓋をして2分程度蒸し焼きにする。

⑥ 蓋をとり肉と野菜を片側によせ、空いたところで③の合わせ調味料を少し焼き炒めてから(酸味を和らげ旨味アップ!)具材と炒め合わせ水分が少し煮詰まるくらいまで火を通す。

※生姜焼き用の豚肉でもOK 
エノキダケの代わりにエリンギやしめじ、またピーマン等くわえても楽しめます。

「来ちゃった」若い頃、言ったなぁ、言われたなぁ……きょう久々に口にした。ただあの頃とは違う、15分前に予告しての突然すぎない訪問。会いたい衝動より気使いが勝るなんて、ずいぶん大人になったものだなぁ。そんな気持ちの全てを受け止めている笑顔が、開けた扉の中にあった。「何かあった?」迎えながらの一言に、少し照れながらもリラックスしていく。さっと目の前に出された肴とグラス。話きくよの合図。この豆腐の一皿、奴じゃないね、 何やらいい香り、えっいつの間に作ったの?! ありがとう、話をする前に抱きしめていいかな。

作り方

① 豆腐(半丁170g)はキッチンペーパーに包み、皿など(重しとして)を上に置き、軽く水をきる。

② ボールに、鶏ガラスープの素(パウダー状のもの小さじ1/2)、醤油(小さじ1/2)と、①の豆腐(包んでいたペーパーをとって、表面の水気もさっとふきとる)、刻んだ青ネギ(20g)を最後に入れる。

③ ごま油(小さじ2)を小さなフライパン等で熱し、②の青ネギめがけ垂らしかける。全体を混ぜ合わせる。

・豆腐の崩し具合はお好みで。

・豆腐の水きりは調味料や葱を準備する間くらいの時間でOK。もちろん、ゆっくりしっかり水切りしても。

夏だから。恋したから。言葉にするまでもない理由で、その只中を突っ走っていた季節があった。お互いの遠く青い日々を知らない今の人と、ふとした流れで思い出の欠片を見せ合う時間が好きだ。そこにジェラシーはない、むしろ愛おしい。夏の終わりが近いから、イチジクをテーブルにのせた。デザートではなく肉といっしょに、凝った作りではなくシンプルに炒めただけ。甘じょっぱさに箸がとまらないが、甘酸っぱい思い出話もまだまだ続きそうだね。歳を重ねたからこその楽しいおしゃべり、秋の入口。

作り方

① 薄切りの豚肉(モモ・ロースなど150g)を一口大に切り、塩ひとつまみ(0.5g)と胡椒少々で下味をつけ、米粉(または小麦粉 小さじ1)をまぶしておく。

② イチジク(2個)は皮をむき、1果を6~8個のくし切りにする。

③ フライパンを熱しオリーブオイル(小さじ1~2)をいれ、①の豚肉を中火でほぐしながら炒める。

④ 肉の色が変わったら余分な油をふきとり、②のイチジクを加える。

⑤ イチジクをなるべく崩さないように肉と混ぜ合わせながら1~2分(イチジクが熱くなるくらいまで)炒め、醤油(小さじ1/2)をまわしかけサッと炒めたらできあがり。

返信ばかり受け止めている。話は、いつもこちらから。たまたま続いているだけのことと自分をなだめる。若い頃なら我慢できず詰め寄ったかも…そんなモヤモヤは一瞬にして消えた。ウキウキに変わった。会いたいと、むこうから先に連絡がきたのだ。正確には、会いたいのだなと思わせる回りくどい言い方で。浮き立つ気持ちは料理に託す。柔らかい牛肉を、真っ赤に熟したトマトと合わせて。見た目も味も華やかだ。旨味がジュワッとひろがる。「美味い」ふたりとも思わず声に出した。こんなふうに素直にお互い気持ちも見せ合えたらいいのに。でも、回りくどさも大人の趣かな。

作り方

① 一口大の牛肉(切り落とし150g)に、塩・胡椒(各適量)で下味をつけ、片栗粉(小さじ2)をまぶしておく。

② トマト(1~2個)はくし切りに、キノコ(エリンギ・しめじ等 50g)は食べやすいサイズに。

③ フライパンを熱し植物油(適量)をいれ、①の牛肉を中強火でほぐしながら炒める。

④ 肉の色が半分くらい変わったら、鍋の片側によせ、空いたところに②のトマトとキノコを加える。

⑤ 材料それぞれを時々焦げ付かないよう動かしながら加熱、火が通ったら混ぜ合わせ、調味タレ(酒 小さじ2  醤油 小さじ2 砂糖 小さじ1)をまわしかけ、さっと炒める。

⑥ 器に盛り、あれば刻んだ青シソか小葱を添える。


・キノコはなくてもいい。玉ねぎやズッキーニ等を加えても。

・トマトは最初フライパンで焼き付けるように水分をとばし火をいれると、旨味をひきだし香ばしく仕上がります。

・材料の分量によって、塩・胡椒などで味は調えてください。

この部屋には、まだ慣れない。少し前まで訪れていたであろう、違う誰かの影を感じることはなくなったけれど。「ピーマン、生だから」部屋の主から目の前に大きな皿が置かれる。ん?ピーマンの肉詰め?生?戸惑いは、すぐに好奇心に変わり、さっそく口にする。強烈な味や香りを想像していたら、違った、むしろ爽やかだった。好みの味と部屋主の笑顔に、心身がほぐれていく。まだ慣れない、というのは短く贅沢な時間なのかもしれない。あとすこし、この不安定な空気にトキめいていよう。

作り方

① 玉ねぎ(1/2個 80~100g)と生姜(2スライス)をみじん切りに。

② フライパンに植物油(適量)をいれ、玉ねぎを中火で炒める。油がなじみしんなりしはじめたら、水(大さじ1)をくわえ蓋をして全体がしっかりしんなりするまで蒸し焼きに。

③ 蓋をとり、水分をとばしてからフライパンの片側に寄せ、あいたところに豚のひき肉(100g)と①の生姜を入れる。肉を広げたら、しばらくさわらず、焼きつけるように。肉の表裏をひっくりかえしながら、ヘラ等で切り分けるように細かくほぐし炒める。※玉ねぎがこげないように、主に肉の部分に火があたるようフライパンをずらしながら進める。

④肉がほろほろになり肉汁が透明になったら玉ねぎと混ぜ合わせ、甜麵醬(大さじ1)と酒(大さじ1)をくわえ、ムラなく味がなじむように炒めあわせる。

⑤ ピーマン(3個)は、縦半分にカット、ヘタと種ワタをとりのぞき氷水に放っておく(玉ねぎを蒸し焼きしている間や、肉に火を通す間にやっておくと無駄なくよい)。

⑥ ピーマンの水気をキッチンペーパーでとり、肉味噌は小鉢にいれ、盛り付ける。あれば、肉味噌に花山椒か五香粉をふる。食べるときにピーマンに肉味噌を載せる。


・ピーマンは生食にするので、できるだけ新鮮なものを。肉厚で柔らかそうなものがおすすめ。

・辛みがお好きなら豆板醤を少し加えて。

ふたりで舞台を観た。少しお喋りしたいけれど、この時間から賑やかすぎる場所も重い食事もノーだ。自ずと家路につく。どちらの部屋にいくのか、話さずとも考えが一致するようになってきた。この場所からなら、こっち。軽めのツマミがいいよね。コンビニ寄らなくても大丈夫、でも面倒なことはしない。レタスを手でザクッとわって準備1分、レンチンしている間に、ハグとキスと乾杯。さぁ熱々食べよ、ゆっくり話そ。

作り方

① レタス(半玉  芯はとる)を手でザクッと2つに割り、レンジにかけられる皿に盛る。

② オリーブオイル(大さじ1)と醤油(小さじ1)、梅肉(小さじ1/2~1)をまぜあわせ、①のレタスにまわしかける。

③ ふんわりラップをかけ、レンジ(600W)で2分半加熱する。

④ ラップをとり、かつおぶし(適量・たっぷりめ)をふりかける。

・加熱後しんなり具合が足らなければ10秒単位で追加熱してください。

・梅肉はなくてもOK、そのときは醤油を少しふやしてください。

二軒目にバーではなく、かき氷に誘った。だから一度はクールに理性的に向き合ったのに、氷の前に自分が溶けた。心と体が勝手に動いたあの夏が、懐かしくなりはじめている。今年の夏はどうする?話をきりだしながら料理を卓へ。初鰹を少しだけピリ辛のサラダ仕立てにした一皿。「生き物の味がする」「春菊の苦みが優しい」なげかけた話は宙に浮いたまま、胃袋に初夏のエネルギーがおさまっていく。「出かけるなら秋にしない?」「そうだね」話は早い。夏の計画とくになし、ベストな着地だ。かき氷を一度くらい一緒に食べてもいいか。

作り方

① 生食用の葉野菜(ベビーリーフミックス・春菊・水菜など 50g目安)を食べやすいサイズにちぎりわけ、水洗いしたあとよく水切りする。

② 鰹のたたき(150g目安)を、食べやすい一口大にきりわける。

③ ボールにポン酢(大さじ1)とコチジャン(小さじ1/2)・ゴマ油(小さじ1)を入れ、よく混ぜ合わせる。

④ 合わせダレで①②の葉野菜とカツオを和える。器にもったら煎り白ごま(適量)を指先でひねりつぶしながら降りかける。好みでラー油や糸唐辛子等で辛みをさらにくわえて。

・葉野菜は数種ミックスでも単品でも。大葉や三つ葉・貝割れ・海藻等をくわえてもよい。

経験と反比例して恋に不器用になった。同時並行とかノリ代とか、無理だ。ずるさを抱える体力がなくなっただけと自笑する。一人に別れを告げスッキリさせた心地よさはあるが、傷つけた痛みが体中を侵食している。きょうは、やさしい味を。目の前の人へ振舞っているようで、その実、自分のために作ったのかもしれない。ごめん、ゆるして。「おぼろ月みたいな焼売」ふいに言われハッとする。そうだ、こんな感じ方をする今の人に恋をしたのだ。お互い見つけてしまったのだ。おぼろ月みたいな柔らかさが今ここにある。

作り方

① 玉ねぎ(大1/2個 120g)をみじん切りにして、片栗粉(大さじ3)をまぶしておく。

② 豚のひき肉(150~200g)に、醤油(大さじ1)・砂糖(大さじ1)・鶏がらスープの素または帆立スープの素(顆粒タイプ 小さじ1)、すりおろし生姜(少々)をくわえ、粘りが出るまで練るように混ぜる。

③ ゴマ油(小さじ2)と①の玉ねぎを、②の肉ダネに合わせ混ぜ合わせる。

④ エノキ茸(100g)を細かく刻みバットにひろげ、一口大に丸くまとめた肉ダネを置きコロコロころがし、エノキ茸をまとわせる(掌でころがしながら、しっかり密着させる)。

⑤ 火が通るまで10分ほど蒸す。


・しっかり味つけてあるので、つけダレなしでOK。好みで辛子をつけて。

・蒸すかわりにレンジでも仕上げられます。その場合は、軽く水をふきかけ、ふんわりラップして加熱を(600W4分目安)。

・エノキのかわりに塩揉みしたキャベツの千切りでも。もちろん焼売の皮で包んでも。