下町と六本木で鬼ガン見

 大学生の姪が、はるばる泊りがけで遊びにやって来た。元々の目的は、とある舞台鑑賞だったが、残念なことにコロナ影響で直前に公演中止。そのぶん、少しでも経験値をふやして来てよかったと思える時間にしてあげたかった。

 この姪、ミーハーなところがない。最新スポットなど興味ないようで、美術展で面白そうなところはないか、というのでいくつか候補をあげ相談した結果、「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~東京シティビュー」「北斎 百鬼見参~すみだ北斎美術館」に出向くことに。

 水木しげる展は自身も観たいと思っていて、東京シティビューであれば六本木ヒルズの52階で「高層の眺望、東京観光な感じ」も味わってもらえるなぁと即決。この選択、大正解!気が遠くなるほど細かく描かれた、原画の数々にひきこまれた。妖怪たちの可愛い像は絶景を背景に写真が撮れ、姪は妖怪の名をプレートを見るまでもなく言いながら、楽しそうに写真におさめていた。「東京タワー観ている姿も撮っておいたよ~」知らない間に私も撮られていた。妖怪、叔母である。

 北斎美術館、私は何度か訪れている。北斎ゆかりの地にあるし、以前、姪の姉(もうひとりの姪)と行ったときに楽しんでいたので、一応候補提示してみたのだけれど、喰いついた。偶然にも「鬼」がテーマの企画展中で、そのことが姪の琴線に触れた様子。怖いもの好きだったの?!

 「描き方がおもしろかった。特に円で形をとったり文字から絵を起こしたりしているところ」後日、姪のSNSで見つけた感想。「挿絵の元の話を知っていたらもっと楽しめたなと思う。知識があることで楽しめることも多い」 ふむふむ、そう感じていたのね。

「あれ、スカイツリーだよ ここからだと小さいか」美術館前で、私が指さすと「大きいよ」と返ってきた。そうだね、大きいよね。なんか気持ちいいパンチをくらったな。


 鬼つながりと思っていたけれど、考えてみたら二つの美術展は「漫画家」展であった。姪は、少年漫画好きだ。本人いわく、アニメではなく漫画。好きなものがあるのは、いいことだ。

 実は水木しげる展のあと、すぐ近く(国立新美術館)で開催されていた「ワニがまわる~タムラサトル」ものぞいた。この美術館の造形や環境を知ること自体いいなぁと思ったこともあるけれど、「造りもののワニがまわっているだけ」という不思議な展示に、よい予感しかなく、いっしょに体験してみたかったからだ。「ワニがまわってる いい空間だね~」 ただそれを共有する、いい時間だった。

 美術展には、基本ひとりで出向くが、たまにはよいものだ。たまには。

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