素晴らしき芸術体験 2023年折り返し

 2023年7月、気づけば一年折り返しているではないか。年明け4日に初展覧会詣出してから毎月なんやかんや美術展を訪れてきたのに、言葉にすることなく今日にいたってしまった。人に話したからかもなぁ、と自己弁護。もちろん書き留める義務があるわけではないが、言葉にしたためようと自分で思ったんじゃないのか、喝っ。

 2月、エゴンシーレ展@東京都美術館。苦しさと美しさが憂いとなり、その瞳に宿った自画像は胸キュンものだったが、21才の時に描いた一枚(人物が登場しない抽象画)が印象的だった。自分が壊れてしまう前に流す涙のような、もどかしさがあふれ、生きるための絵画な気がした。

 東京都美術館では5月にマティス展も楽しんだ。感想をひとことで表すなら「なつかしい」である。大芸術家の作品展をみて、なつかしいとは何だと突っ込まれそうだが、若い時から割と積極的にふれてきた画家だからこそ生まれた素直な感覚なんだろう。25年前にマティス美術館に訪れたときの高揚が(実は、その空気に包まれて泣いた)、心の隅をくすぐるように、ふんわり思い出された。やっぱり好きだぁ。

 日本の芸術家も、すごかった。何がすごいって、どうしようもなく「芸術」とともに生きてきた軌跡がそこにあったからだ。

 1月、大竹伸朗展@東京国立近代美術館。約500点、彼の作品をこれほどまでに一度に多く鑑賞したのは初めてだったが、初期作から最新作までテーマごとにまとめられた(時系列ではない)空間を、その世界に身をゆだねるように巡っていけるものだった。愉しい時間だった。

 5月、佐伯祐三-自画像としての風景展@中之島美術館。3月に東京ステーションギャラリーで開催されていた展覧会だが、中之島美術館にいちど行ってみたかったことや大阪出身の画家であり当美術館が誇るコレクション中心だったので、いろいろまとめて関西方面での予定をたて出向いたのだ。あまり予備知識なく見てびっくり。こんなに風景に、人に、己に、文字通り命の限り対峙した画家だったのかぁ。なるほど「自画像としての風景展」だ。彼の最後の作品といわれる「黄色いレストラン」を目前にしたとき血流が騒いだ。芸術との格闘を、まざまざと見せつけられた。彼もエゴンシーレ同様、短い生涯であった。

 5月の中之島美術館では、もうひとつの企画展「デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン」展も堪能してきた。タイトルから察せられるように、デザイン性の高いアートとアート作品のようなデザインが混在展示。アートとデザインの境界はなんだ、と問いかける企画、展示品の近くには「デザイン⇔アート」のスライド装置があり、見る側が中央のボタンを自分が思う位置に移動操作して巡れる仕組みになっていた(その集計結果は、出口付近で確認できる)。私自身は、迷うことなく、一番右か一番左にスライドを動かしていた。アートだろうとデザインだろうと、チャーミングでなくちゃ。正しいものより、楽しいもの、面白いもの、美しいものが強い。

 可愛くチャーミング&ノスタルジックだったのは、3月に訪れた田村セツコ展@弥生美術館。大先輩女性に誘われて訪問。待ち合わせ直前にWBC準決勝メキシコ戦の逆転サヨナラ勝ち!その興奮を一気におさめたのが「田村ワールド」だった。少女漫画やサンリオに夢中になったタイプではないが、幼いころ目にしたのはハッキリわかる。あの表紙、あの文房具、あったあった、このカワイイ絵を覚えているよ~。小学1年生の私が笑っている。伯母さんに贈られた筆箱を手にした時を思い出した。現在85歳、ご活躍を続ける田村セツコさん、元気もらいました、感謝!

 訪ねた展覧会は、まだある。しかもコレクションたっぷりだったアレとかアレとか。振り返れば、脳みそがフツフツ沸きそう。また思い立ったときに。やっぱり、こまめに記さなくちゃだね。

saikosan

さいこさんの創作セカンドライフ

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