薬膳料理レッスン②~開運のりまき&鬼除け汁

 はじめて参加した「ふだんのご飯で薬膳入門」講座。地域活動の企画なので、利益目的ではない(参加費はいたって低め)。それゆえか営業マインドなホスピタリティはなかった。それがダメということではなく、むしろ心地よかった。昨今はクレームをおそれて何かと細かくフォローが過ぎる事が多いが、「それぐらい解るよね、省くね」というスタンス。人への信頼が土台になっていないと、できない雑さである。

 さて、何が雑かって。まずレシピ。料理に精通していないと作れない書き方である。下準備の仕方や調味料の順番など、いろいろ抜け抜けだ。説明デモと実習のある講座だから、いいのかもしれないけれど。そのレシピをもとにした、講師デモ。生姜は身体の表面しか温めないとか、海苔は実は「寒」素材だとか、簡単な薬膳情報が混ざる。話の合間から「2班に分かれて実習」することを認識する。

 「このご時世です、手洗いをしっかりしていただき、巻き物は“いつもと違い”お一人ずつビニール手袋をつけてやっていただきます」 衛星管理、コロナ対策について、いくつか説明指示がある。納得の内容だが「いつもと違い」がひっかかる。いつもが解らんがな、と心の中で突っ込む。班の中での役割分担はどう決めるのか、調理器具はどこにあるのか、手を洗うのはどこでどういう順番で、と疑問がわらわら溢れてくる。「いつものように」前提で話がどんどんすすんでいく。質問するスキなく「はい初めて~」の合図。うわぁ。雑はいいけど、スリリングだよ~。

 キッチンタンクに人が並び、手を洗っている。違うひとりが、我が右隣のドアをあけ(あ、洗面所だ!)そこで手を洗い始めた。よし、こちらで次に洗おう。手を洗い調理台にもどると、すでに前から参加であろう先輩方が調理道具と材料を運んできている。「あっ、おじさん(たった一人の男性参加者)同じ班じゃん」と思った瞬間、おじさんも先輩だと判明。さっと椎茸を手にとり、細切り作業をすすめているではないか。

 「みなさん、凄いですね。初めてなので勝手がわからず…」自分の立場を口にしてみるが、目の前の若そうな先輩ニコッっとするだけで返しはない。そうか、ならば!目の前にあった山芋を髭処理してイチョウ切り、柚子を千切り、黙々と。

 みな指示がなくとも出来ることを凄いスピードですすめている。あ、あの人、ほうれん草を茹でている!汁物も煮始めている!コンロはあそこで使うのかぁ。火まわりは手をださないでいよう。いろいろ観察しながら、自分のポジションを勝手に決めてみる。

 「ボールはどこに?」一瞬の間をみつけ目の前の人に質問する。「この下」とタンク下への指さしを受けとめ、見つけたボールで肉の下味をつけることにする。気づくと、やることにあぶれた様子のおじさんが私の横にピタッとはりつき、レシピメモを見ながら、調味料の分量を教えてくれた。はじめての協力体制だぁ~!おじさんと調理台にもどり、出来上がってきた海苔巻きの具材を、班のメンバー分にとりわける。「この皿に載せますか」「これも用意したほうが」おじさんの独り言のような小さな声に「そうですね」「じゃあ人参は私が」とこたえ、会話を成立させる。「初めての参加で勝手がわからず」私の言葉を受け、おじさんはニコッとはしないけれど、次にすべきことを教えてくれた。ありがとう。

 怒涛の実習も終盤、数の限られた巻き簾を使って順番に海苔巻きづくり。「お先にどうぞ」ここにきて若い先輩が、私に声をかける。遠慮と見せかけて、やり方を確認するつもりだな。うがった推測をたてつつも、遠慮せず作ることに。海苔巻き、何年ぶりだろう、遠い記憶とさっき見たデモを思い出し、やってみる。自分でも驚くほど、スイスイできるではないか。酢飯を伸ばす指先を、若い先輩が見ている。「板前さんみたい」と小さな声。板前さんではないけれど、料理好きなおばちゃんなのよ。心の中でひとりごち、さっさと作り終える。巻き簾を先輩にわたし、鬼除け汁(大豆のはいった豚汁的なもの)の盛り付けと洗い物を手伝う。ああ、ようやく勝手がみえてきたぞ。これぞ現場習得、経験とよぶのだな。

 本来なら、お喋りしながら質問しあいながら試食するのだろうが、きわめて短時間の黙食。おじさんとも若い先輩とも、少し言葉を交わしてみたかったけれど、仕方がない。人が集い学習することにおいて、コミュニケーション「分かつこと」がどれほど重要かを再認識する。

 海苔巻きは「当日中に食べる」ことを条件に持ち帰れたので、半分残してその日の夕飯に。薬膳感な印象は残っていないが、心身うごく健康的な時間だったなぁ。


※ライブな環境についていくのが精いっぱいで、写真はほぼ撮れなかった。それもまたよし。

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